ちのつく言葉
一月九日
庭に出てみると蝋梅の花が満開でとてもいい匂いです。
私はこの花の香りが、くちなしや沈丁花よりも好きです。
寒い冬の盛りにいち早く咲き、蝋細工のように光沢があ
る黄色の小さな花、生けておくと、部屋中に上品な香気
が漂います。
話が変わりますが読んでいた本のある一節にこういう
下りがありました。車谷長吉の短編集「漂流物」の中の
「愚か者」のなかの「ちのつく言葉」からの引用です。
会社勤めの私は、人が去った後には何ほどか寂しい
思いが残ると語り、会社の机の上で小雀を飼っていた
少し風変わりな「高田氏は傘をさして、外から事務所に
帰って来るや、私のそばへ来て「日本語でちのつく言葉が
大事なんですよ」と言った。私は氏の顔を見て、息を呑んだ。
「ち、ちち、つち、うち、くち、もち、わだち、はたち、らち、ふち、
けち、きち、いのち、みち、さち、いち、しち、はち、かたち、
のち」と言うと、にやりと笑った。そして不意に背を向けると、
壁の陰へ消えた。足もとに雨滴がたれていた。」
とあります。このひらがな表記のちのつく言葉を漢字に置き
換えながら読んでみて、
わだち 自分の歩いた後
ふち 人生の深淵
らち 物事の区切り
しち ラッキーセブン それとも質種の七
はち 七ときたから八ではなくて、托鉢の鉢
のち 未来のこと、今後のこと
などと考えてふーんなるほどと、納得しました。
車谷の作品は鹽壺の匙を読んだことがありますが、私小説
を書くことを業さらし、恥さらしと考える作者の、愚か者と称す
る分身が出てきて、私と言う者の存在の根拠を問うています。
| 固定リンク
« 初泳ぎ | トップページ | ニットなら大丈夫 »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- ばたばたと(2009.07.11)
- 少しすっきりしました(2009.07.07)
- 自由だった教育現場(2009.07.06)
- 七夕会(2009.07.05)
- 涼しげな(2009.07.04)



コメント